アセクシャルについて

ここでは、アセクシャル (アセクシュアル 、Aセクシャル、エイセクシャル)について解説していきます。世界的な動向と日本独自に進化した部分に分けて説明していきます。私たちのアセクシャルの解説に関しては、asexual.jpの独自研究的な部分も含まれています。ご意見等は、メールでご連絡頂けますと幸いです。
 なお、特別な断りが無い限りは、「アセクシャル」「Aセクシャル」「エイセクシャル」「Aセクシュアル」「アセクシュアル」「エイセクシュアル」は同一の意味で利用していると思って頂ければ大丈夫です。


簡単に(端的に)

 端的にまとめると、こんな感じです。詳細は下の解説もご覧ください。(あくまでも端的にまとめていますので、出来る限り下の解説も見てくださると嬉しいです。)

アセクシャル=他者に対して性的魅力を感じないことです。

恋愛感情を感じるかどうかについて関係なく、「アセクシャル」となります。
また、恋愛感情に関して以下のようになります。

他者に恋愛感情を感じないアセクシャル=aromantic asexual(アロマンティック アセクシャル)
他者に恋愛感情を感じるアセクシャル=romantic asexual(ロマンティック アセクシャル)

・・・という言葉で表されます。

最近は「アセクシャル=他者に対して性的魅力を感じない」と使われることが比較的多くなっています。その一方で、日本独自の傾向としてこのように分類されている場合もあります。

ノンセクシャル=他者に対して恋愛感情を抱くが、性的魅力を感じないこと


 当サイトのスタンスとしては、(昔から)「狭義のアセクシャル」「広義のアセクシャル」としたとおり、両方とも「アセクシャル」として扱います。

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世界的な動向

 アセクシャル(英語:Asexuality)は、世界的な動向としては、主にアセクシャルの世界的コミュニティでは最大である、AVEN(The Asexuality Visibility and Education Network)では、次のように定義されています。

An asexual person is a person who does not experience sexual attraction.

邦訳:アセクシャルの人は、性的魅力を感じない人のことです。

 AVEN(The Asexuality Visibility and Education Network)

 つまり、「アセクシャル」というと、他の人に対して、性的魅力・関心・欲求を感じるかどうかにおいて、性的魅力等を感じないこと、また他人との性的コミュニケーションを望まないことを指しています。
 他者に対して性的な関心や欲求を抱かない性的指向をアセクシャルとしています。
 アセクシャルの人(無性愛者)は、このように、他の人に対して、性的魅力等を感じない人・他者との性的コミュニケーションを望まない人のことを指しています。

 世界的な動向としては、日本独自の部分と異なり、他者に対して恋愛感情を抱くかどうかについては、言葉上の違いはありません。
 他者に性的魅力を感じないのがアセクシャルですが、恋愛感情について感じるかどうかは、別に言葉が定義されています。
 大きく分けると、他者に恋愛感情を感じないアセクシャルが「アロマンティック アセクシャル(aromantic asexual)」、他者に恋愛感情を感じるアセクシャルが「ロマンティック アセクシャル(romantic asexual)」と分かれています。
 恋愛感情の感情対象を前に付けて、「〜romantic asexual」(〜ロマンティック アセクシャル)という表現をしています。つまり、<恋愛感情の対象><性的魅力の対象>と2つに分けて考えています。

  • 他者に性的魅力を感じず、他者に恋愛感情を抱かない
    aromantic asexual(アロマンティック・アセクシャル)
  • 他者に性的魅力を感じず、異性に恋愛感情を感じる
    heteromantic asexual(ヘテロマンティック・アセクシャル)
  • 他者に性的魅力を感じず、同性に恋愛感情を感じる
    homoromantic asexual(ホモロマンティック・アセクシャル)
  • 他者に性的魅力を感じず、両性に恋愛感情を感じる
    biromantic asexual(バイロマンティック・アセクシャル)
  • 他者に性的魅力を感じず、性別に関係なく好意を抱いた対象に恋愛感情を感じる
    panromantic asexual(パンロマンティック・アセクシャル)

などの表現がなされています。

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日本独自の動向

 日本においては、アセクシャルについての定義等は、世界的な潮流とは異なった部分があります。
日本独自の部分について以下触れて行きたいと思います。

 日本では、恋愛感情の有無についても問われるかたちとなっており、さらに細分化されているかたちとなっています。

  • アセクシャル(無性愛)(昔は:狭義のアセクシャル)
  • ノンセクシャル(非性愛)(昔は:広義のアセクシャル)

 日本独特の言葉の動きが出来た背景には、「恋愛感情を他者に対して抱くことがあるか」という視点が大きく見られます。
 海外の流れとしても、「恋愛感情を他者に対して抱くことがあるか」どうかで言語的な対立が見られたこともありますが、現在では、恋愛感情の有無にかかわらず、他者に対して性的魅力を感じるかどうかが主な視点となっています。日本では、「恋愛感情の有無」で用語がわかれたかたちになっています。
<参考>昔のasexual.jpでの、アセクシャルの定義について(当時、狭義・広義の論争のあった頃です)

また、このあたりは、アセクシャルの歴史(別ページ)でも触れております。

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アセクシャル、どう発音?

 英語でのAsexual(アセクシャル・アセクシュアル)の、「A」の部分をどう発音するか、ですが、

英語圏での「Asexual」の読み方は、「エイセクシャル」「エイセクシュアル」と「エイ」と発音するのが一般的です。

例えば、アセクシャルをテーマにしたフィルム、「(A)sexual」の中では、「エイセクシャル」と発音されています。その他の海外のアセクシャルをテーマにした映像作品などでも「エイセクシャル」と発音されています。
 略としては、「ace(エース)」(トランプのA(エース)と同じ)が使われる傾向があります。

日本での「Asexual」は、「A」を「ア」と発音する傾向が強いです。

例えば、「アセクシャル」「アセクシュアル」など。もちろん、「エイセクシャル」「エイセクシュアル」と発音する人もいて、発音についてぶれが見られます
 また、頻繁に「アセク」「エイセク」と略されることが多いです。
 日本では、言葉の最初につく「ア」=いわゆる否定形だから、になった部分があるようです。
 2003年頃には「アセクシャル」と呼ばれることが多かった頃から、日本では当初から「アセクシャル」という言葉になっていたかたちです。(当時は「音声」で英語の発音を聞く機会がなかったため、発音が変わったと思われます。)(「アセク」という略し方もこの頃にはあります。)
 なお、「sexual」を「セクシャル」とするか、「セクシュアル」とするかは、他のセクシャリティ(セクシュアリティ)同様、発音・表記のゆれが見られます。

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他の言葉との違い

 アセクシャルと似たような感じで用いられる言葉がありますが、その違いについてです。

セリバシー(celibacy

  •  セリバシー(celibacy)は、性欲はあるけれど、性交渉をしたくない、という状態を指す言葉です。「禁欲」などと訳されることもあります。
  •  性交渉を「したくない」という点で、アセクシャルの性交渉をしたいという欲求(性的魅力を感じる)自体がない、というものと、状態が違います。
  •  セリバシー(禁欲)は、キリスト教文化と結びついている部分も見られるため、あまり日本では一般的ではありませんが、海外、特にキリスト教文化の強いところではよく見られます。
  •  海外では、セリバシー(禁欲)と、アセクシャルは全く異なるものとして一定の見解が得られています。

草食系

  •  草食系、は日本独特の言葉で、海外では今のところ該当する言葉は見られず、「Soshoku-kei」と日本発祥語で書かれることもあります。
  •  草食系は、恋愛において消極的、ガツガツしていない、奥手、受け身、相手の積極的なアプローチを苦手とする状態やそういう人を指す言葉です。ただ、恋愛感情や性愛感情が無いわけではなく、性的魅力に関する感情を失っている状態ではないとされています。
  •  その点で、アセクシャルの「他者に性的魅力を感じない」と、草食系の「恋愛においてガツガツしていないが、性的魅力は感じる」は、状態が異なると考えられています。

無性欲

  • 無性欲、は性欲自体が存在しない状態を指していますが、このこととアセクシャルの違いについては、違うという見解が一般的です。
  • アセクシャルの場合は性欲自体はあるケースもある(無いケースも含まれる)が、性的魅力を他人に感じない状態を指しており、人によっては自分で処理してしまう(いわゆる自慰行為)こともありますが、無性欲については、そもそも性欲自体が無い状態を指しています。
  • 無性欲の人が、同時にアセクシャルでもある可能性はあります。

性嫌悪

  • 性嫌悪は、性的な行為や性的な接触に対して嫌悪感を抱いていることを指しており、アセクシャルの他人との性的な行為に魅力や興味を感じない(性的魅力を感じない)のとは違うかたちになります。性嫌悪ではどのような性指向の場合でも起こりうるので(異性愛者だが性嫌悪がある、など)、性嫌悪だからアセクシャル、と等しい関係になるわけではないです。もちろん、アセクシャルで性嫌悪を伴っている場合も考えられます。

セックスレス

  • セックスレスは、結婚関係や恋愛関係にある人の間で、性行為を伴わない状態を指す言葉ですが、セックスレスの場合、最初は性行為を行っていたが、何らかの理由で次第に性行為を行わなくなった状態を指しており、最初から性的魅力を感じておらず、性行為自体も行う必要性を感じていないアセクシャルとは違うものと考えられます。

性的欲求障害(HSDD)

  • 性的欲求障害(HSDD-Hypoactive Sexual Desire Disorder)は、性的欲求や性的興味が減少する状態を病的なものとしてとらえた(DSM-4という疾病分類で挙げられています)ものですが、病的な要因として性ホルモン不足やうつ病などの精神的要因、薬剤による影響などがあり、本人がその治療を望んでいる(カウンセリングや薬物治療などを望んでいるなど)状態を指していると考えられています。この部分において、アセクシャルの人は治療を望んでいない(病的要因が無いことが多く、ある場合でも治療を望んでいない)ことから、性的欲求障害(HSDD)とは違うものと考えられています。
  • なお、DSM-5という疾病分類表では、女性の場合、「Sexual Interest/Arousal Disorder」(性的関心・性的興奮障害)、男性の場合、「Hypoactive Sexual Desire Disorder」(性的欲望低下障害)となっていますが、自分自身を「アセクシャルである」と認識して、それで納得出来る(治療の必要性を感じない)のであれば、障害ではなく、アセクシャルなものであると具体的にされていることから、別物となります。

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